「#TikTokでニュース」で見えてきたこと
今井 佑 氏(TikTok Japan / Head of News Content)
東京都出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、NTTドコモ入社。東京大学大学院学際情報学府を経て、日本経済新聞社入社、日経電子版の立ち上げメンバーを務める。その後、スマートニュース入社、メディア事業開発マネージャ。2019年より現職。TikTokにおけるニュース配信事業を手がける。
■ 「#TikTokでニュース」とは
2020年8月から、信頼できるコンテンツを増やす取り組みとして、国内外の大手のメディアと連携したニュース配信をしています。政治経済・国際から始め、21年5月にスポーツ・エンタメを扱うSE(#TikTokでニュースSE)を追加、現在では52媒体、週間再生3億回、フォロワー数300万に成長し、様々なニュースを週1500本ほど届けています。目指しているのは、習慣的なニュース視聴を促進すること、信頼できる情報を必要な人に届けること、知識を増やして行動や態度に影響を与えることです。
■ 実はニュースとTikTokは相性がいい
「TikTokでニュースを流しても見てもらえない」と思われる方もいるかもしれませんが、TikTokとニュースは結構相性がいいと思います。動画を見続けてもらうためには、何を扱い、何を伝えたいのかが、すぐに分かることが重要です。ニュース原稿は先に結論があり、ディテールが後に続くという、見続けてもらえる動画の構造を初めから持っているため、TikTokで流すニュースも、ユーザーを引きつける工夫をすれば、しっかり見てもらえることがわかってきました。
■ 再生数の多い動画の傾向
再生数が多いのは、映像のインパクトが強いニュース、ユーザーに身近で興味関心を持ってもらえるニュース、そして「見出し+すぐに本編に入る」といった“引き”を意識した構成のニュースです。テロップを上手く入れたり、アナウンサーが見出し部分を省略してニュース本編から入るといった構成にすると、ユーザーにとってわかりやすくなります。
■ 媒体各社の取り組み
《ライブ配信》
国民的関心事である災害時の気象庁の会見映像は、ニュース媒体各社からライブ配信をしています。TBSのトンガ海底火山噴火の会見は、夜中の2時頃であったにもかかわらず、約6500人もの視聴者がいました。
《アーカイブ配信》
開局から50年ほど経つ多くのTV局は、たくさんの自社アーカイブ映像を持っています。IBC岩手放送の、45年前に大船渡で開かれた成人式の映像は、それ自体が面白く、若い人にとっても興味をひくものでした。
《ニュースアンカー》
3分ほどの動画で伝えきれないニュースは、媒体社のサイトで詳しく見てもらいます。給食時間に心肺停止となった小学生を先生6人の連携で救った朝日新聞のニュースでは、ニュースアンカーという仕組みを使い、多くのユーザーが朝日新聞デジタルに遷移しました。
■ とても重要なポリシー
私たちは中立性と透明性を重視するポリシーを掲げており、ニュース配信はアルゴリズムに任せ、特定のニュースに肩入れしません。提供されたニュースは編集せず、できるだけプレーンな状態で配信することを心がけています。さまざまな機能の追加も、中立性と透明性を重視して進めています。
■ 新しい金脈
広島の被爆者の方を取り上げたニュース(被爆者の75年|毎日新聞)がたくさん再生されたことは、「#TikTokでニュース」の方向性を決めるきっかけとなりました。「被爆者が3分間延々語る動画が、若者にこれほど見られるとは思わなかった。生の証言を届けられるプラットフォームという金脈を発見したようだ」というコメントを担当者からいただきました。今後も、信頼できる情報と、考えさせられ、知識を増やし、行動・態度の変容を促す良質なニュースを、しっかり集めていきたいと思っています。
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