<Q&A>
小出氏(資生堂ジャパン・メディア戦略部エグゼクティブマネージャー、ABC協会・理事、開発委員長):広告主が持つ課題に対して、ファンコミュニティをどのように活用すればよいか教えてください。
松田氏:『オレンジページ』は、「生活を豊かに、昨日より良い今日」を意識しており、読者はそれを楽しんで雑誌を読んでいます。また、クライアントさんは新しい顧客への認知を広げるために出稿されると思いますが、そのクライアントさんが持つブランドのファンに、「このブランドのどこがいいのか」を語っていただけるような広告誌面ができないかな?と。オレンジページ読者には「新しい、価値ある商品情報」がもたらされ、クライアントさんは「自社商品をファンが語ってくれる企業価値」を紹介することができ、クライアントさんのファンには、「自分の好きなブランドを一般誌で紹介できる喜び」が味わえるのではないかと。三方よし、の実現ですね。
畑江氏:タイアップ企画では、編集部が誌面やウェブのコンテンツを作成したうえで商品の説明をしますが、プラスアルファで、その商品をLEE100人隊の生活に落とし込み、編集部との視点とは違うリアルな声をブログで紹介することで、読者はそれを自分事化し、受け入れやすくなります。そのため、クライアントの皆様には、LEE100人隊が書く体験ブログの活用をお勧めしています。
山岡氏:『ハルメク』では、まずシンクタンクを用いて、クライアントの課題解決に応じたプランニングを行い、それをもとに誌面やウェブサイト上でタイアップ広告を展開します。その後、母数4000人の読者モニターを集めたイベントを開催し、様々な意見を収集することができます。このように、調査からタイアップ企画、そしてイベントを通じたファンコミュニティ作りまでをパッケージにしてご提供できます。
-事業収入のなかで全体のバランスはどうなっていて、イベントは収益とファンコミュニティづくりのどちらに主眼を置いているのですか?
山岡氏:詳細は公開できませんが、通販も大きなウェイトを占めています。私たちはハルメクワールドと呼んでいますが、コンテンツを入り口にして、ハルメクに参加していただき、雑誌を読み、ウェブも見て、通販で買い物もし、イベントにも参加するなど、全体としてハルメクのなかで楽しんでいただき、そこでまだ提供できていないものがあれば、新規事業として追加することで、ハルメクワールドをより楽しいものにしていく。このように、単体の収益ではなく、トータルで収益のバランスをとるビジネスを展開しています。
-ファンコミュニティ作りはフリーペーパーでも可能でしょうか?
畑江氏:フリーペーパー単体で考えると、接点が少ないので難しいと思いますが、ウェブサイトやSNSなどに紐づけていけば可能だと思います。
山岡氏:ファンの定義は、信頼感や期待感など購読料の有無以外にもあるので、読者が意思をもってコミュニティに接し、これを大切にしたいという想いが醸成できれば可能だと思います。
松田氏:フリーペーパーでも可能だと思います。ウェブやSNSとの連動はもちろんですが、まず、小さなコミュニティ作りから始めることが重要です。初めは大規模・大人数を想定しがちですが、それでは運営するだけでも大変なので、可能な範囲で、運営者自身が参加して楽しいと感じる規模感で始めることをお勧めします。
-ファンコミュニティに参加している人に対して、どのようなメリットを提示しているのですか?
山岡氏:『ハルメク』には金銭的なバックはなく、読者は意思をもって参加しており、イベントの参加費用などは自己負担です。『ハルメク』読者という共通項があり、同世代が集うコミュニティに安心して参加することで、楽しみを享受したり、居場所ができることがメリットになっています。
畑江氏:自分が良いと思うものを勧めたいというファンの原動力を活かして、『LEE』を一緒に作りあげているという参加感が重要です。また、編集部では、読者の悩みに耳を傾け、それに対して誌面やウェブサイトを通じて解決法を提示することで、日々の生活が良くなっている、自分のためになっていると実感してもらうことも大切な要素となっています。
松田氏:『オレンジページ』を一緒に作り上げていく参加感や、自己肯定感が育まれていくことだと思います。本当のファンは、お金を払ってでも参加したいと思うので、金銭的なバックは考えたことがありません。
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