オレンジページのファンコミュニティとイイトコロ
松田 紀子氏
(オレンジページ / オレンジページ編集長)
■ オレンジページのファンはどういう人?
まず、『オレンジページ』の編集長になって、ファンがどういう人かを知るために調査を行いました。その結果、(1)くり返しの日常に安心し、ほんのり成長志向がある(2)ネガティブな情報や要因を自分の生活圏内にいれない(3)食べる行為へのわくわく感と探究心が強い(4)世話好きでほどよいゆるさがある-という4つのファンタイプを導き出しました。
ファンが感じているオレンジページのイイトコロ(価値)は、(1)機能価値=情報量がほどよくタイムリーであること、創刊から37年というゆるぎない歴史があること、幅広い年代の女性に読まれていること(2)情緒価値=「オレンジページの紹介なら大丈夫」という信頼感、「いつ読んでも心が温まる」という安心感、日常の小さな気付きや工夫に共感できるワクワク感(3)未来価値=「食べることの喜びを教えてくれるところ」で、読者がその価値を家族に与える際に頼りにされ、ほんのりした将来への不安に寄り添ってくれることも認められているとわかりました。
ファンのタイプと、ファンが感じる価値を突き詰めれば、「生活や生き方を肯定してくれ、自分自身が満たされた気持ちになる」というところが支持されているとわかります。この“ファンのツボ”を1カ月という短期間で導き出せたのは、オレンジページメンバーズというファン組織のお陰でした。
■ オレンジページメンバーズ
現在、会員数は約19万人、アクティブメンバーは約8万人です。このファンコミュニティでは商品開発も行います。シングルマンションのキッチンの開発では、ファンコミュニティからキッチンの画像を募集、ワークショップで検討し、皆さんの声を反映して料理を「楽しむ」ために本当に必要な要素にこだわった仕様・設備を開発しました。当初、通常仕様と2タイプ販売したところ、オレンジページ仕様のキッチンから売れていったため、現在は、シングルマンションにはオレンジページ仕様のキッチンを標準搭載するようになったと聞いています。この成功はファンの声の力によるものだと思います。
■ ファンからの信頼感
『オレンジページ』読者の主婦層は「お金に疎いのでは」と思われがちですが、実際はとても興味を持っています。クライアントからマネーセミナーを開催したいといったお話をいただきますが、これもオレンジページが主催することで「安心感がある話が聞ける」とファンが来てくれる。おそらくクライアントがダイレクトに開くより、警戒感なく参加いただけるので、今後はこうしたセミナーにも積極的に取り組みたいと思っています。
■ 「類友」雑誌は支持される
冒頭の『オレンジページ』ファンにみられる4つのタイプの方がコアファンになって支えてくれています。編集部のメンバーもこういうタイプが多く、作り手と受け手が似てくる面白さがあります。価値観の近い編集者が読者と「類友」になり、共感を生み出しやすい土壌となっています。
また、「オレンジページなら大丈夫」という信頼感と、「癒やしがあって肯定してくれる」という読後感が、本誌の最も素晴らしい価値です。ここに共感してくれる読者がファンコミュニティにたくさんいます。同質の価値観を持つ読者が集う雑誌、「類友」雑誌は支持されやすく、オーガニックリーチ(口コミ)が広がりやすい。今後、ここを活かして部数増にも取り組んでいきたいと考えています。まだまだ雑誌の可能性は伸ばせるので頑張っていきたいと思います。
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