ハルメクが考える熱狂的ファンづくりとは
山岡 朝子氏
(ハルメク / ハルメク編集長)
■ ハルメクとは
雑誌『ハルメク』はシニア女性対象の月刊誌で、コンセプトは「50代からの暮らしを豊かにする生活実用誌」です。創刊当時から定期購読で販売していますが、このスタイルがファンづくりに大きく影響しています。ハルメクでは、まず雑誌やウェブのコンテンツでファンをつくり、雑誌とともに届く通販カタログに興味を持っていただき、さらにイベントや講座などの体験交流の場を提供、コミュニティ参加を通してハルメクを人生のパートナーにしていただくという関係が出来ています。通販のみ、コミュニティ参加のみの方もいて、雑誌を離れてもハルメクのファンという形も出来ているのが特長です。
■ 成長のカギはファンづくり
2017年頃は創業以来の最低部数となって苦しんだ時もありましたが、リニューアル後の5年間で定期購読者数は約3倍に急増しました。成長のカギはファンづくりであり、この5年間は徹底的な「顧客理解」に基づくファンづくりの道のりでした。
(1)ご意見はがきをすべて読む=毎月3千枚ほど戻ってくるご意見はがきにある「ハルメクへの短い手紙を書いてください」という欄へのコメント記入率は80%を超えており、その内容を編集部全員ですべて読み、編集者が自分の中に「65歳のA子さん」といった読者像を育てる(2)独自のクラスター分析=独自のクラスター分析でシニア女性を価値観別に分類し、メインターゲットを定める(3)シンクタンクを活用=社内シンクタンクに所属する調査のプロが読者分析を行い、雑誌発行後の満足度も社内シンクタンクが分析、編集部にフィードバックしてPDCAを回す(4)直接会う=少人数のグループインタビューから数百人規模のイベントなど、読者の方に年に数百回直接お会いする機会を設け、様々な意見を収集し、それを誌面づくりに反映する-こうした取り組みから生まれる「刺さる記事」と、定期購読システムによる読者との「距離の近さ」によって、「ハルメクは私の雑誌である」というファン心理が醸成されます。
■ 成功事例
(1)誌面とイベントの連動で特別な体験を共有=誌面で紹介した音楽堂での読者限定コンサートは即満席となり、ハルメクファンが体験を共有する機会となりました。ゲームアプリの体験会や高齢者住宅の見学会など、同様の手法を活用した広告タイアップはどれも盛況です(2)シニア向けオンライン講座マニュアル=コロナ禍以降のイベントのオンライン化は、シニア世代にとってハードルが高かったものの、知見を基に「必ず接続できるマニュアル決定版」を作成。今やオンラインイベントは千名以上が同時にアクセスして楽しめるファンコミュニティに成長しています(3)ファンとの距離=社を挙げたおもてなしによって、ファンの社員に対する距離が非常に近くなりました。イベントは基本的に内製で運営しており、現場の社員にファンがつくケースもあります。参加者の満足度は5段階評価で平均4.8です。
■ ファンづくりから広がる、さまざまなビジネス展開
ファンづくりから広げ、さまざまなビジネスを展開しています。通販部門のアパレルは、顧客研究から独自サイズを考案し大ヒット、高齢者住宅選びの相談サービスも好評です。「シニアマーケティングに最も成功した企業」と評価され、最近は他社からコンサルティングを依頼されることも増えてきました。
ファンコミュニティをウェブにも展開するため、9月に新規事業として「ハルメク365」というサービスも始めました。オンライン講座やリアルイベントにも会員価格で参加できるため、順調に有料会員を増やしています。
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