2005年、オーストラリアの学者マーク・マクリンドルが「Z」に続く新世代として提唱した「α(アルファ)世代」。以前から世代分析に意欲的な東急エージェンシーには、このα世代を研究し、マーケティングに実装するために設置されたデザインファーム「αFind(アルファインド)」があります。11月14日、同チームから、藤田俊紀氏、山田晶子氏を迎えてオンライン開催した勉強会には、広告主と発行社の両会員251人が参加。社会・文化的側面から特性を探り、専門的視点で語られる世代特有の価値観に「新世代の輪郭が見えてきた」という感想が多く寄せられました。
世代分類の中の「α世代」
世代ごとに名前をつけて分析する試みは、1965年から80年までに誕生した人々を指す「X世代」から始まりました。その呼称は、若者時代の彼らが、大人たちに未知なる存在“X”と見なされていたことに由来します。
そこから、「Y世代」「Z世代」(生年は右図参照)と続きますが、現在、高校生から20代後半までに当たるZ世代は、比較的なじみがあると思います。彼らはインターネット黎明期に生まれ、人と情報が次々に繋がる中で「インスタ映え」「推し活」など独自の文化を生み出し、ここ10年、若者理解に向けた足がかりになりました。そうした彼らも大人になり、今のトレンドをつくる世代として注目するのが「α世代」です。
2010年以降に生まれ、現在14歳までの人々に相当するα世代は、まだ全員が子供の範疇で、国内人口はX世代と比べると半分の規模です。1世帯に2人子供がいたX世代と比べ、α世代は1.3人。子供同士で触れ合う機会が減り、大人の中で過ごす時間が増えるため、大人びた子供になりやすいと見ています。大学の研究では、一人っ子の場合は、兄妹がいる子供よりも自尊心が強くなるそうで、私たちも「自分を大事にする価値観が強まる」と予測しています。
世代特性を形作る3大要素
私たちは、行動観察はもとより、背景にある要因にも注目しています。各世代の特徴形成には、幼少期から思春期の環境が影響しており、①歴史的事件:劇的な事件・災害、紛争など国内外のマクロ環境を変える出来事、②社会制度の変化:法律や教育方針、社会支援など生活に関わる制度の変化、③テクノロジーの進化:生活家電やインターネットなど、効率・利便性の向上で生活時間の配分に変化をもたらす機器の登場―の3つの要素が大きく関わっています。
これを各世代に照らしてみると、「X世代」は①プラザ合意からのバブル景気を体験②終身雇用制度が根強く、学校教育は詰込み式の時代③家庭にはテレビやゲームのような家電が増えてきた―こうした環境からX世代は、努力すれば報われるという向上心や競争意識を持ち、組織への帰属意識が強い傾向があります。
「Y世代」は①バブル崩壊後の経済的衰退を体験②派遣法改正など雇用制度が変わりゆく中、ゆとり教育で個性が尊重された③インターネットの普及や掲示板カルチャーの登場で、悲観的な社会を客観的に論じ合う場が生まれた―そこから、Y世代には個人主義とともに、諦めのような感覚も広がったと理解しています。「Z世代」は①リーマンショックや東日本大震災を体験②アクティブラーニングや探求型学習を受ける③スマートフォンとSNSが普及した―彼らは震災などの経験から、将来の不確実性や不安を内面化しています。また、主体性重視の教育により、自ら発信することが一般的になりました。SNSで他者との接点が大きく広がる環境下で、コミュニティごとに人格を使い分けることが自然になり、情報が氾濫する中で冷静さや合理性を身につけてきたと言えます。
歴史的事件から、α世代を読み解く
「α世代」を考察する上で、新型コロナウイルス緊急事態宣言の発出は大きなポイントです。彼らは20年2月下旬から3カ月もの一斉休校で、家族以外との交流機会が激減しました。休校明けも学校行事の中止で級友たちとの接点が著しく減少し、交流の場はオンラインに移っていきました。コロナ以降はゲーム時間が大幅に増加し、弊社調査では、α世代の4割が「ゲームのコミュニティの仲間は、学校の友達より信用できる」と回答する、驚くべき結果が出ました。また、かつては、クラスの誰もが知っている曲や、みんなが好きな曲などがありましたが、今、そうした状況が生まれ難くなっている点も特徴的です。
こうしたα世代に対しては、彼らが「好き」を起点に繋がり、そこを強化する仕掛けが効くはずです。具体的には、投票や共感スタンプ、ハッシュタグなどを活用し、商品に対する「好き」や「共感」を可視化します。彼らは、コンテンツ起点でコミュニティを形成するため、仲間の存在を実感できるプラットフォームで「好き」を共有する場を設け、新商品企画に参加してもらうなどして、ブランドへの帰属意識やロイヤリティが高まれば理想的です。
社会制度の変化から、α世代を読み解く
SDGsの採択は、α世代の学校教育に大きく影響しています。親御さんからは「買い物先のスーパーで、子供から見切り品を勧められた」「子供がフードロスを意識して残さず食べている」という話が聞かれ、社会課題との距離の近さが分かります。SDGsの学び方も特徴的です。例えば、地球温暖化について、CO2云々を知るだけではなく、SDGsの観点から自らの考えを発表し、かつ他者の意見に触れることがセットになっています。知識だけではなく、共感や共助をもって動けるような強い社会意識が育っています。
彼らに対するアプローチを求めるなら、企業がCSRを発信する際には、単に内容を伝えるだけではなく、一緒に広める発信者になってもらう工夫が必要です。具体的には「知る」「考える」「発信する」という3段階のコミュニケーションが望まれます。まず、企業が向き合う社会課題は遠い世界の話ではなく、自らの生活に繋がる課題であると伝えることで、彼らの共感が得られるはずです。そして「自らに何ができるのか」と自分ごと化してもらい、発信の動きに結びつけます。α世代の「私はこんなことした」という発信が社会貢献に繋がる「#〇〇アクション」のような投稿企画で、彼らを巻き込みながらCSRの拡散を目指せると考えています。
テクノロジーの進化から、α世代を読み解く
2010年、モバイルデバイスの普及率は1割程度でしたが、20年には9割に達するまで急速に普及しました。今や小学6年生でも半数以上がスマートフォンを保有しています。SNSはコミュニケーションの場として一般化し、個人の発信力が大きくなりました。その中で育ったZ世代は、「いいね」やフォロワー数、再生回数などの評価を自己価値と捉え、他者を意識して見た目を最優先する「映え」などの文化を醸成してきました。彼らは自身のブランディング手段として能動的にSNSに関わっています。一方、α世代は、モバイルを手にした頃には、アルゴリズムによってほぼ自分の興味に沿った情報だけを得られるようになっていたため、SNSに対して受動的です。X(旧Twitter)は基本的に情報収集手段として、Instagramはファッションやお店選びなどの検索ツールとして使っています。
そして、彼らのSNSとの関わり方には、19年以降、Instagramが「いいね」数の対外的非表示を可能にした仕様変更が大きく影響しています。つまり、彼らがSNSを始めた頃には、他者の評価「いいね」を気にする必要がない環境になっていました。そのため、α世代には、周りがどうかよりも、自分にフィットしていると感じてもらうことが重要です。
具体的には、商品の色形などを自分好みに選べる余白のあるプロダクト設計が効くと考えています。また、インフルエンサーによって商品に憧れを抱かせるよりも、その機能を理解してもらい、自分に合うと納得してもらう方が、購入に導きやすいはずです。替え芯やボディをカスタマイズできるペンなどはその一例で、生成AIとの会話を通じて、自分に合った商品を選べるコミュニケーションも増えています。
α世代のAI利用率は、中学生以上になると親世代の利用率を超えています。宿題や課題の答えを調べたり文章を考えたりとAIは探索的思考のショートカットです。彼らは、AIを通じた情報収集能力に長けていますが、覚えたり悩んだりする習慣がないため、記憶力や思考力の低下が見られ、難なくある程度の結果が出てしまうため、自己効力感が低い傾向にあります。
そのような彼らに対しては、考える負担を減らしながらも「自分でできた」という小さな体験を積み上げられる設計が有効と考えています。TikTok Shopのようなライブコマースで、「これが良いかも」と直感した時に購入判断をすぐに後押しできる設計が最適です。また、自己決定感や達成感を持たせる仕掛けも有用で、ドリンクを購入するごとにスタンプが貰えたり、歩いてポイントを貯めたりという、ゲーム感覚でレベルアップを実感できる施策も見受けられます。
α世代の行動変化を押さえれば、アプローチの糸口は必ず見つかるはずです。αFindは、その先のコミュニケーションについても、色々な企業に伴走しながら、知見を蓄えているところです。
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