【JICDAQ品質認証事業者インタビュー】
株式会社 ADKマーケティング・ソリューションズ
デジタル広告の品質課題を解決するための認証機構として設立された「一般社団法人デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)」は、2023年4月で3年目を迎えました。デジタル広告において、広告会社は、広告主の要望を直接聞いたうえで、デジタル広告品質課題への対応を行う重要な立場にあります。
今回は、日本ABC協会の広告会社会員であり、JICDAQ認証を取得している(株)ADKマーケティング・ソリューションズの清家氏、藤森氏、佐藤氏のお三方に、同社のアドベリフィケーション(※1)対策や、デジタル広告業界の健全化に対する取り組みについてうかがいました。プラットフォームビジネスセンターセンター長
清家直裕氏(写真中央)
プラットフォーム戦略局パートナービジネスグループ グループ長 藤森祐貴氏(写真右)
パフォーマンスデザイン局アカウントデザイングループシニア・プランナー 佐藤有希氏(写真左)
-はじめに、皆様の業務について教えてください。
清家氏:私はプラットフォームビジネスセンターの統括をしております。前職ではデジタルメディアやアドテクベンダーに在籍しておりました。現在は当社のデジタル広告部門を統括しています。また、一般社団法人日本インタラクティブ広告協会(以下、JIAA)で理事を務めており、JICDAQ設立にも関わりました。
藤森氏:私は同センターのプラットフォーム戦略局に所属し、国内外のプラットフォームや周辺ベンダーとのビジネススキーム構築を担当しています。19年には、当社の広告品質を高めるためアドベリチームを立ち上げ、アドベリツールベンダーの導入検討・選定やワークフローの構築、また全社向けのトレーニングなどに携わりました。
佐藤氏:私は運用広告のコンサルが在籍しているパフォーマンスデザイン局に所属し、その中で、各案件のKPI達成状況や主要プラットフォームの重要プロダクトの導入状況を可視化し、当社全体の広告運用水準向上のための取り組みを行っています。また、アドベリチームで、藤森と一緒にデジタル広告の健全化にも取り組んでいます。
-貴社のアドベリフィケーション対策について教えてください。
清家氏:まずは対策にいたる経緯をお話しします。2016年頃から、海外においてYouTube等で公開された不適切な動画に広告が配信されることにより、大手広告主にブランド毀損が生じていることを認識していました。当社でも取引先の広告主から、不適切な配信先に広告が配信されるのを事前に止めてほしいという要望が多くあり、その頃から当社としてもデジタル広告の品質課題について認識し、対応を検討し始めました。
藤森氏:当初は、要望があった個別案件に対して、配信プラットフォーム上でキーワード設定、セーフ・ブロックリストの適用、アドベリツールの利用で対応していました。また、広告掲載後に、配信先メディアの状況や、不適切なコンテンツが掲載先となっていないかを確認し、再度除外設定を行うというオペレーションを手作業で繰り返し行っていました。しかし、これらの作業はサービスレベルが均一化されておらず、効果にも限界があったため、18年にアドベリツール事業者であるMomentum社のHYTRA DASHBOARDを導入しました。同社のプロダクトは精度が高く、不適切サイトを網羅しており、かつ業界でも絶対に排除すべき対象であるIHC・CODAリスト(※2)の不適切ドメインも含まれています。当社はこれをGoogle広告や一部のDSPにて標準適用しています。さらに、Integral Ad Science、DoubleVerify、Moat等他社のアドベリツールについてもご提供させていただいており、主に外資系広告主を中心に多く利用されています。これらのアドベリツールを用いて、ブランドセーフティ・アドフラウド・ビューアビリティ等の対策を行っています。また、プライベートマーケットプレイス(※3)や予約型広告の利用など、安全性の高い面への掲載が可能となる配信手法もありますので、クライアントが求めるレベルに応じたプランニングを行っています。
-JICDAQ認証取得後、社内外においてデジタル広告課題に対する意識は変わりましたか。
佐藤氏:社内では、デジタル広告の品質課題に対しての意識は高まったと感じています。以前は、デジタル広告の品質課題に対して高い意識を持っている人もいればそうでもない人もおり、個人によって差がありました。しかしJICDAQ認証取得後、インターネット広告サービス規約を改定し、その変更点と併せて認証を取得した背景や重要性について社内で説明会を実施したところ、社員全体のデジタル広告課題に対する意識が高まりました。アドベリチームとしては、認証という裏付けをいただいたことで、以前から取り組んできたアドベリフィケーション対策への取り組みが間違っていなかったと自信を持つことができました。一方、社外は、広告主様からアドベリフィケーション対策について聞かれる機会が多くなってきています。これに対しては、当社が行っている対策やJICDAQ認証について自信を持ってお話ししています。
-最後に、デジタル広告の課題や業界の健全化に対してどのように取り組みたいとお考えですか。
藤森氏:私からは対策の重要性や業界全体の健全化についてお話しします。広告主のブランドは長年構築されてきたものであり、不適切なサイトに広告が掲載されブランドが毀損されることや、アドフラウドによって、広告費が一次メディアではなく、反社会的勢力へ流れていくことは非常に大きな問題であると感じています。これらは広告業界全体の信頼性が問われる問題であり、全ての事業者が関わって解決していく重要な事項であると思います。デジタル広告は成長している市場です。アドベリフィケーション対策を取ることは、よりよい市場にしていくためにも必要だと考えています。
清家氏:業界の健全化を進めていくためには、今後はブランドセーフティやアドフラウド以外のデジタル広告課題にも取り組んでいかなければなりません。JIAAで毎年実施されている「インターネット広告に関するユーザー意識調査」では、利用者が不快に感じるインターネット広告の主な要素は「不適切な広告フォーマット」「不適切/不快な広告内容」「不安・不快に感じるターゲティング広告の手法」という結果が出ています。これらは、いわゆる「うざい広告」の問題であり、不快に感じる表示のされ方や何度も同じ広告が表示されるというユーザーエクスペリエンスの毀損に繋がる大変重要な課題です。また、この課題はサステナブルという観点からも重要です。昨今サステナブルという言葉が社会ではよく使われていますが、この言葉は私たち広告業界にも当てはまると思います。先ほどのユーザーエクスペリエンスに関わる問題を解消しないと、広告に対するネガティブなイメージのせいで、次世代の若者たちが広告業界に魅力を感じなくなる可能性もあります。彼らが将来広告業界を志望してくれるためには、こうした課題に対しても、業界で連携して対応していかなければなりません。それがサステナブル、広告業界の持続可能な発展に繋がると思います。
※1 アドベリフィケーション:DSPやアドエクスチェンジを通じて配信される広告が、広告主の意図・条件に沿ったサイトや場所に掲載されているかを検証する機能。
※2 IHC・CODAリスト:IHCリストは、警視庁/インターネットホットラインセンターが提供する違法・有害サイトのリスト。CODAリストは、一般社団法人コンテンツ海外流通促進機構が提供する著作権侵害サイトのリスト。
※3 プライベートマーケットプレイス:媒体社と広告主を限定したクローズドな広告の取引市場。
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